蟹江記念館

やった美少女ゲームの感想とか

インターネットと二次元美少女のオタクを包むゲーム、NEEDY GIRL OVERDOSE

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 ということでNEEDY GIRL OVERDOSEをクリアしたので感想です。

 以下、私が核心ではないと判断したネタ以外のネタバレを含みます。いつかまっさらな状態でやりたいと思っているオタクはこんなものを読んでないでとりあえずsteamで購入手続きをしてできればなるべく早くやろう。楽しいぞ。

 

 

store.steampowered.com

『NEEDY GIRL OVERDOSE』は、最強のインターネットエンジェル(配信者)を目指す承認欲求強めな女の子(超絶最かわてんしちゃん)との生活を描くマルチエンディングADVです。配信を行いながら、ちょっぴり病んだり、ストレスが減るやつをキメたりする日常を過ごしつつ、超絶最かわてんしちゃんのフォロワーを増やしていきます。様々な形の破滅を体験しつつ、この物語にハッピーエンドが存在するかどうか、あなた自身の目で確かめてください。

 

steam紹介文より引用

 

超てんちゃんを最高のインターネットエンジェルにしよう

 プレイヤーはとして超絶最かわてんしちゃんこと超てんちゃんとその中の人のあめちゃんの両方を支え、プロデュースして100万人の登録者を目指すゲームです。

 紹介文にある通り承認欲求が強くメンタルは不安定、顔はとにかくいい女のあめちゃんは全てをピであるこちらに委ねてくるので彼女の毎日の行動を決定し、ストレスや精神の管理をしつつ動画配信者としてビッグにしていく育成ゲームの色が強い本作。

 お久しぶり先生のカラフルで毒のあるかわいい美少女と配信者の女の子という設定がかなり今っぽい。そしてそこにそのカラフルで今っぽい絵をドットに落とし込こみ2000あたりまでのWindowsのデスクトップを彷彿とさせる画面づくりとピコピコしたBGMがなんかレトロっぽい、そのバランスが既にすごく良い。起動してちょっと触っただけでワクワクするゲームはいいですね。

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フォロワー、ストレス、好感度、やみ度を管理して
彼女を最高にインターネットエンジェルにしよう

 彼女とピ(性別は明言されないのでこちらに委ねられます)は同棲しているので最初から付き合っている状態からスタートです。最高。

 CP厨としても付き合ってからのカップルが好きなオタクとしても自己投影エロゲオタクとしても最高ですね。いわゆる攻略対象とカウントできるヒロインが一人なのもこのスタイルなら納得の出来です。

 ちなみにエッチなこともできます。俺はピだからね。するとストレスとやみ度が減って俺への好感度があがる! 便利なコマンドじゃん! やったね。

 彼女と秋葉原や中野におでかけしたり、はたまた一緒にメンクリに行ってあげることはもちろん、ゲームやエゴサや動画サイト視聴してもらって配信のネタを拾いつつ本人のスキルを上げていくことができるのは配信者として育てている・あるいは彼女の健康をみてあげるという点で使命感や支配感が味わえて楽しいです。

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なんやかんやLOVE FOREVERのスタンプが万能

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 画面右のJINEで彼女とメッセージのやりとりをすると彼女の表垢と裏垢が表示されるぽけったー(twitterみてえなSNS)に反映される。俺はピ。キモチェ~~~~オタクくん見てる~~~??? 見ないほうがいいぞ。とかにもなる。たのしいね。

 そんな感じで彼女と遊んだり寝かしつけたりときにはストレス発散のためにおくすりを飲ませたり(のませる量も俺が決めます)でだんだんとストレスや闇、俺への行為を募らせながら配信者として成長していく彼女が輝く様とどんどん不健康になっていく様を見守っていくのが気持ち良いし申し訳ない。

 でも顔のいい女がどんどん破滅していきそうになるのってゾクゾクするんだよな。こうやって俺はピなのに結局彼女を消費してしまう。そういうのもこのゲームの醍醐味だと思います。

 ちなみに飲ませるおくすりによって演出がしっかり変わります。細かい。キメた状態でエッチすることも可能。すごいですね。とにかく顔のいい女はキメてても絵面がいい。キメてる女の絵面が好きならそれだけで買う価値があります。

 

インターネットと俺、に向き合う

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八尺様のこともエッチな目でしか見てないオタクのみんな~

 配信内容は雑談やゲーム、ネットロアや陰謀論、エロ配信など様々で、段々と配信内容のレベルが上がるとともに過激な内容ほどウケがよくなるのはインターネットというさすがインターネットと言う感じ。随所に散りばめられたネタも古今(多分2000年代初期~今)織り交ぜてという感じでこれ知ってる・これはミームだけ知っている・これもなんか元ネタあるんだろうけどわからない、が多く自分がこれまでの人生に浸っていたオタクとインターネットの走馬灯のような味がします。

 偶像としての天使というワードが何度も使われる本作、さよならを教えてを彷彿とさせるワードが何度もでてきており、実際に彼女がそれをプレイする場面もでてくるのですがそれ以外にも様々なエロゲのネタがどんどん出てくるあたりもオタクとして楽しいです。ただただ有名になったワードが出てくるだけでなく、美少女ゲームで取り扱われていた架空の美少女・エロゲーのエロを隠れ蓑にした陰鬱な要素・電波と呼ばれるもの・陰鬱とした精神性・反モラルなどをひっくるめた漠然とあの頃のエロゲーの俺達がなんか好きだったやつ、の雰囲気や精神性が感じられてこれ好きなんだよな……わかってるな……これだよこれ……のようなオタク上から目線気味謎感情を気持ちよくしてくれる部分も多々あります。

 配信コメントやSNSコメントの治安の悪さもまさに今まで見てきたインターネットの石の裏側の湿度がそのままだし、「〇〇助かる」や「きてくれてありがとう」などオタクミームもある。一言SNSが発達してるけど匿名掲示板も元気でカキコとか巨大AAとかも全然現役。

 このゲームの特徴としておそらくわざと現役ではないインターネットミームもたくさん混ぜてある(漏れとかキターとかあの辺)のがこのゲームの非現実感と俺達が見てきたインターネットの凝縮感を強めているんだと思います。今っぽいゲームなのに今もうないものがここにある。でもじゃあこれなにって言われたら今まで見てきたインターネットぜんぶ、みたいなものがそこにある。

 

 ライターは多分アルファツイッタラーとかそういうのものに分類されるにゃるら氏であり、私も氏のファンというか、根室記念館だったころのブログだとか今のTwitterだとかnoteだとかを見て美少女ゲームオタク文化のなんかこう……あるじゃん……ああいう文章や氏のインターネットへの憧憬あるいは祈りみたいなものを日々見ているので余計に感慨深くなったりこれ、よくツイートで見るやつだな……となったりして面白かったです。

 例えば先日の記事でも言及したふゆから、くるる。のライターである渡辺僚一はTwitterを見ていると氏のテンションがかなり登場人物のテンションに近く味がそのまま入っているんだな、と感じることが多いのですが、本作もかなりにゃるら氏のエッセンスが強い。

 でもそれはにゃるら氏がそのまま二次元の美少女になったのではなく、氏が今まで通ってきたオタク文化やインターネットを全部入れて、余計だと思ったものは削いで美しく濾過して美少女ゲームの美少女にしたのが本作のあめちゃんであり超てんちゃんなのではないだろうかという塩梅なので、ライターを知っていることが余計なネックにならない出来は素晴らしいなと思いました。氏の顔写真も変な靴の写真とかも思い浮かぶのに別に超てんちゃんには結びつかない。

 

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別にいつだってインターネットは優しいだけの場所ではないのはわかっているが、
価値観の固まった古いオタクなのでどうしようもなくこれに同意して泣いてしまった

 親からもらったWindows95でダイヤルアップ接続をしていた頃のインターネット、エロゲの存在をまだゾーニングされていないゲーム屋の隅やゲーム雑誌で知ったがなかなか手がとどかなかったあの頃、電話料金でバチクソに親に怒られながらも全くやめられなかったインターネット、書き込まれた怖い話を本当に怖がっていたインターネット、インターネット越しに創作物を眺めていた裏ページにリスカ写真を載せていた同人サイトの管理人さん、yahooの掲示板で知り合ってメールのやり取りをしていたオタク、AAとかあんまりもう今書いちゃいけないような画像が踊るFlashアニメ雑誌でしか知らないアニメやその後の配信サイトの普及で触れられるようになったアニメ、先輩から借りたエロゲ、エロゲのMADばかり見ていたニコニコ動画、ようやくDL販売その他で過去の名作に手が届くようになったり新作のエロゲをプレイする今、そういうものが作中の登場の有無に関わらずどんどん溢れてきてウワーーーッとなりすぎる。

 なっていてクリア後にぼんやり布団の中でずっと天井をみながらそういうことを感がていました。そういうゲームです。(本当に人によります)

 

 

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インターネットの亡霊の救済がここにある

 はじめは顔が良くてヤベー女が破滅する様を眺めよ~という配信者という存在に向けられがちな陰湿寄りの好奇の感情と俺が彼女を守護らねばというエロゲオタクくんのキッショくも美しい感情で進めていた本作ですが、様々な成功・失敗・俺への感情が大きくなりすぎたり逆に消えてしまったりといろいろな彼女とこのゲームを続けていくうちに見えてくる、あまりにも作り込みがそれっぽい”インターネット”を浴びすぎることでインターネットというものすごく楽しくてものすごく最悪な場所への感情と懐古が強くなってそんな安いスタンスではいられなくなっていくのが本作の面白いところであり恐ろしいところでもあります。

 そういう外側に思いを馳せるからといってどんどんヒロインたる彼女がシステムとしてのただの架空のキャラクターとして遠くなるわけでもなく、彼女は彼女でどんどん「プレイヤーの彼女」でありかつ「美少女ゲームの美少女」であることを浴びせてくるのでそこにもどんどんとのめり込んでしまう、本当に濃度の高いゲームでした。

 

好きなEDの話

 好きになるEDとはなにかという話になってしまうが、納得ができるEDという点では全て良かったので全部になってしまう。どのEDもその道筋をたどるならそうなってしまうよねというものと、様々な破滅を見守るゲームとして破滅の形が美しい・あるいはバカバカしく残酷で面白いので好きになってしまうからだ。

 では個人的な嗜好・趣味による好みではという話になってくると、やはりおそらく想定された一つの大ENDである「Do You Love Me?」がとても良い。というかこれがいい。オタクの言うこれがいいです。副題が好き好き大好きなのもいいですね。

 このゲームはこのように往年の名作エロゲやオタクがこれ好きなんだよね…とニチャるフレーズがどんどん散りばめられているのですがEDリストあるいは実績リストを眺めるだけでも気持ちよくなれます。

 他にも何でも新興宗教の教祖になるパロを考えがちなオタクとしてはWelcome To My Religion、一緒におしまいになる概念が大好きなオタクとしてEnchantment Fireも大好き。様々な場面でゲームとしていろんな視覚・聴覚に訴えるギミックがあるのですがそういう面と合わせてRainbow Girlも美少女ゲームという感じで大好きです。

 この辺はプレイしたオタクがあれ良かったよね……と思ってくれると幸いです。

 

ゲーム面の話

 steamのプレイ時間を見ると20時間くらい。途中までろくにインターネットで調べず手探りでやりまくっていた(こういうあがきをするのが好きなため)ので、効率よくプレイするならもう少し短く収まるかもしれません。

 エンドは21種くらい。steamの実績は30個。で確認も回収もしやすくちょうどよく楽しめる難易度だったと思います。

 一部バグで進行不可能になったりするのですが、画面クリックのコツを覚えたり日ごとにされるオートセーブをさかのぼってやり直すとなんとかなるのでそこまで辛くないのも良かったです。クリック連打をしないでゲームの処理を待ってあげようね。そのうちアプデで直るとも思います。

 彼女の精神状態やゲーム進行度によってアップテンポになっていくメインテーマのBGMは非常に素晴らしく、シュポシュポといったSNS更新音のようなクリック音とともにゲームの気持ちよさを高めてくれます。また、キマっていたりキているときの気味の悪い怪音波のようなBGMもかなり毒っぽくていい。

youtu.be

 主題歌もマジでいい。2022年にKOTOKO美少女ゲームの主題歌ですよ。しかも2000年代初期みたいなエッセンスも強い。最高。

 エロゲあるある初回版にしかサントラついてなくてプレイ後に泣く問題も令和のsteam配信なら解決してくれる優しさ。ちなみにゲーム本体とセットで買うことも可能。優しい。セットでも買っても2000円くらいなのマジ???

 数字がゴリゴリ増える作業ゲームとしても楽しいので何も考えたくないときや超てんちゃんに会いたくなったら定期的にプレイしたいですね。

 

インターネットたのしい! インターネットをやめろ

 配信後から一気にプレイしたこともあり、EDフルコン後の虚脱感と俺が好きなものがここにゲームという形で永遠になっている……という感覚がとても強く、宝物のようなゲームでした。

 よくネットで話題になる過去のヤバイエロゲ、みたいな味のする最新のゲームを今プレイできるのは今だよ今。やろう。楽しいよ。

 このゲームは毎日インターネットで躁鬱になっている上に別におもしろみのない社会不適合オタクをインターネットエンジェル超てんちゃんが救ってくれるし寄り添ってくれる。現実にはあめちゃんという俺に依存しきった顔の良すぎる女がいる。そうだインターネットなんてやめよう。インターネットネットはなんでもあって情報がいっぱいあって色んな人がいて楽しいけど情報がありすぎるしいろんな人がいすぎるし俺を悲しませるから毒なんだからインターネットなんて本当はやらないほうがいい。みんな、インターネットをやめるときはせーのでやめようね。